RICOH AUTO HALF
(初代)
 
 もう発売から44年が経つ。

 にもかかわらず、いまもそのデザインはぼくに感銘を与えてやむところがない。見れば見るほど、感動的なデザインだ。

 たとえば、シャッターボタン。ボディ前面、レンズ横にあるきらきらした四角い突起(写真参照)がそうなのだが、シャッターをきるには、この突起を下に押し下げるというエキセントリックなものとなっている。オートハーフは売れに売れてモデルチェンジを重ねたが、初代以外のシャッターボタンは普通の位置に移動している。

 また、この全面メタリック仕上げ(これも初代だけ)。この仕上げはデザイン性に大きく寄与していて、質感も高めている。ボディを持った瞬間のフィーリングも、金属が肉厚なことで相当によい。5感のうち最も迫害を受けている(であろう)「触感」に訴えかけてくるのだ。
 ボディシェルを厚くすることは、頑丈という点で長ずるという意味もある。多くのオートハーフは1度は落とされて4隅のどこかが凹んでいるが、その程度ではビクともしない(本機も、向かって右上が凹んでいるが、全く問題ない)。

 この点、たびたび比較に出してしまって我ながら趣味が悪いとは思うけれども、昨今のデジタルコンパクトはみるに耐えない軽薄・無様な仕上げで、私にはとても受け入れられない。各パーツの無駄のない配置、自己主張しすぎないロゴ、シンプルな操作性・・・。コンパクトカメラは、もうこの時代に完成していたといってもいいのではないかと思う。

 デザインはこのあたりにしておいて、撮影に関する機能の点に移ろう。

 まず、ハーフ判だから、36枚撮りのフィルムだと72枚撮れることになる。普通に撮っていたらいつまで経っても撮り終わらないから、シャッターを押さなければというプレッシャーが強い。写真が上手くなるかもしれない(笑)。

 また、固定焦点(ピント位置を2.5mくらいのところに固定しておくシステム)であるという点は特筆に値する。ハーフ判はその性質上ピントの合う範囲が広いから、遠景・近景についても大きく伸ばさない限りは問題にならないのだ。
 もう21世紀にもなるのに、現在のコンパクトカメラ(含デジタル)の世界では、やたら時間のかかるオートフォーカスしか存在しない。そのようなコンパクト機の現状においては、固定焦点の方が決定機を逃さない、いい写真が撮れると思う(近距離にピントが来ないのが難といえば難か・・・)。
 ちなみに、携帯のカメラは固定焦点のものが多いが、タイムラグが大きすぎるのでアウト。シャッターチャンスを捉えるという意味において現在最もよいコンパクトカメラは、「写るんです」だと思う(=固定焦点)。なお、ピント固定モードのあるコンパクト機は侮れない。リコーのGR系はもちろん、デジタルのR5などでも、「スナップモード」としてピント固定モードが存在する。設計者の涵養された智、良心というものは、こういうところに如実に現れると思う。

 フィルムの巻き上げ機構もよい。シャッターを押せばゼンマイによって自動で巻き上げるのだが、これがまた、電気仕掛けのモータードライブのような歯切れのいい音がする。この音を聞くためにもっと写真を撮らねばという気にさせられるほどだ。廉価機にもかかわらずこんな立派な音がするというのは、何だか申し訳ないような気になってしまう。
 ちなみに、シャッターと巻き上げは別のタイミングにずらすことができる。スナップにおいてシャッター音をあまりさせたくないとき(猫とか)には便利だろう。やり方は単純、シャッターをきるとき押しっぱなしにしておけばいい(最近の機種では、リコーのMF-1なんかがその機構だった・・・と書いてから気づいたが、オートハーフ、R5、MF-1とすべてリコー製だ!これら思想が40年を経て受け継がれているとしたら、すごいことだ。今日、自分の中でのリコーのポジションが上がったかもしれない)。

 固定焦点は当然無限遠までフォーカスがいかないから、その画質が云々されることもある。しかし絞りを絞れば(=日中なら)無限遠まで被写界深度に入るから十分シャープに写るし、絞っていない場面でも、グダグダになるというほどでもないと思う。ただ、場合によっては相当レトロに写るから、好みは分かれるかもしれない(例えるなら・・・昭和時代の記念写真?)。

 シャッタースピードは2速(1/125&1/30)。1/125がオート露出、1/30がマニュアル露出。1/30はストロボのために設けられたものだが、もちろんストロボなしでも使えるから、少々暗いところでも対応できる。これは便利だ。

 というわけでベタぼれなこのカメラ。多分一生使うだろう。

 このカメラで撮った写真は、こちらからどうぞ。
 あと、本家リコーのサイトでもクローズアップされています。このカメラがリコーの誇りであることというが伝わってきます。
 
■スペック
発売年 1962年
レンズ RICOH 25mm/F2.8 (3郡4枚、富岡光学製)
シャッター 1/125(オート時。感度は200まで)、 1/30(ストロボモード時。任意の絞り選択)
フォーカス 固定焦点(パンフォーカス)
サイズ 88*62*35(mm/突起含まず)、310g

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